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図書館で1年半待った待望の作品です!!
この世の春上
『この世の春』 宮部みゆき・著

物語は、宝永七年(1710年)徳川家宣の時代です
下野北見藩(架空です、栃木か群馬の何処か?)は名君と称えられた五代藩主が急死し
21歳の若さで六代藩主・重興に代替わりして5年の歳月が経った

藩主・重興は幼少の頃より乱心の気があり
藩主になって以降も乱心と側用人・伊東成孝の重用著しく
藩政も思わしくなく、とうとう家老達により主君押込(矯正隠居)となり
重興の身柄は、藩主の別邸である五香苑に幽閉される

藩士の娘である多紀は、重興に仕える為に五香苑に遣わされる
そこで自刃したと思われていた、伊東成孝の生存を知らされる
成孝は『御魂繰(みたまくり)』死者の魂をこの世に呼び出す技を遣う出土村の出で
本名は繰屋新九郎という

出土村は16年前に藩の何者かにより「根切り」=皆殺しされていた
辛くも生き残った新九郎は根切りの理由と復讐の為に北見家・重興に近づいた
また重興の乱心は、根切りされた出土村・繰屋家の亡霊が祟っているのだと断定する




上巻は、おどろおどろしい怪異譚の様相で話が進んでいきます
番町皿屋敷か佐賀の鍋島騒動みたいな、如何にも江戸怪談という雰囲気
登場人物の誰もが妖しい・・・・

重興は家臣達も領民も見惚れるような美男子です(年齢26歳)
そして本作のヒロイン多紀は、一度は嫁すものの離縁されています
優しく気働きの出来る女性、おまけに五香苑の使用人たちが見惚れる程「お綺麗な方」です(22歳)
重興の若き主治医・白田先生の‟お年頃”3人の淡い恋愛模様も絡んできます




そしていよいよ謎解きは下巻へと続きます
この世の春下

下巻は怒涛の謎解き編へ

多紀との交流や白田医師の献身的な治療により
重興の乱心の原因は、幼少期から先代藩主の父からの虐待によるトラウマから生じたもの
亡霊ではなく、重興自身が作りだした「人格」であることが判明する
(今でいう、多重人格・解離性障害)

今も尚、家臣・領民から名君として慕われている先代藩主の「裏の顔」を信じきれない

成興の豹変には、成興が、北見家一族と当主の継承を約した『蔓書』の存在と
北見家のみに忠誠を尽くす影の存在が露になる





上下巻合わせて700pを超える長編ですが、流石宮部氏!!
飽きずに最後まで面白く読み切ったしまいました

テイストとしては、『荒神』に似たテイスト(あちらは、怪獣^^;が登場しますが)
読後は、『この世の春』のがスッキリ気持ちよいです 一応ハッピーエンドですし
2冊のカバーイラストが、それぞれの内容を表していると思います
上巻は、雷鳴が轟く暗い背景に背を向けて佇む重興と多岐
下巻は、光あふれる中、見つめ合う2人


こういう「お家モノ」は、味方ずらした裏切り者がいて
味方の1・2人が殺されていくものですが
「セオリーからいったら、絶対この人死ぬ(殺される)」って思っていた人も生き残り
「ホントよかったね~~」とほっとした気持ちで物語は終わりました



・・・・・・ただ気になる人物がひとりだけ・・・・・
伊東成孝=繰屋新九郎の息子・一之助(3歳)が気がかりです
(物語の冒頭、乳母である女性に連れられて、多紀の父に救われ寺で養育されるようですが)
母は自害 父は殺害されえています


一之助の物語 宮部氏に描いて欲しいものです
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2019.03.25 
静かな・・・静かな物語
おもかげ
『おもかげ』 浅田次郎・著


大手商社を定年まで勤めあげ、再雇用の65歳を迎えた竹脇正一
クリスマス目前の年末
後輩たちが開いてくれた送別会の帰宅途中、地下鉄の車内で倒れてしまう

集中治療室に運び込まれた正一の意識は戻らない
会社の同期、幼馴染や家族が入れ替わり立ち代わり正一の元を訪れる

意識が戻らない正一だが、本人は病室のベットで眠り続ける身体を見ながら
次々と現れる「女性」に導かれて、自分の過去を巡る不思議な重ねていく
(一般的・オカルト的表現なら「幽体離脱」のような感じ)




戦後20年、高度成長期を支えた1人であるサラリーマンの人生を垣間見る物語


人は死の淵にあると、走馬燈のように己の人生を”観る”ことがある
と言われているようですが、そんなお話です

静寂の中静かに語られていく物語です


両親はどうその時をむかえたのか?
自分はその時どうむかえるのだろう・・・・と
その時、また両親と邂逅する事が出来るのでしょうか?


相変わらず、浅田氏の著者は泣けます・・・・でも本作‟も”哀しいだけの涙ではありません


竹脇正一は100歳まで生き続け(春哉くんのお陰ですね)節子さんと娘家族と
穏やかな老後を過ごすのだろうと思います

そして、看護師の児島直子さん・・・・彼女も幸せになって欲しいな・・・

2019.03.19 
神戸を舞台に3人の成長物語
ショコラティエ
『ショコラティエ』 藤野恵美・著


物語は1985年神戸の町からはじまります

父を事故で亡くし、敬虔なキリスト教徒の母と2人小さなアパートで慎ましく暮らす聖太郎9歳
地元製菓メーカーの御曹司・同級生の光博の誕生日パーティーに招待されたことから
2人は‟お菓子作り”を通じて「親友」となる
光博の幼馴染でピアニストを目指すお嬢様凛々花も交え
子供らしい小学生らしい日々を過ごしていく

中学生になり、聖太郎は地元の公立校へ 光博は私立校へ進学する
「学校は違うけど、ずーっと友達だ」と誓い合う2人ですが
成長すると共に聖太郎は自分と光博の「違い」を実感し、少しづつ光博と距離を置くようになる

時が経ち、高校卒業を間近に聖太郎は子供の頃夢中になった
お菓子作り・パティシエの道へ進む事を決意
神戸の評判の店「ソマリ」で見習い菓子職人として働く事が決まった

一方、光博は幼馴染の凛々花が聖太郎と付き合いはじめた事知る
凛々花から、聖太郎が菓子職人を目指している事、凛々花も幼い頃からの夢ピアニストへと
2人が才能と情熱をもって人生を歩みはじめた事で
才能も情熱を傾けるモノもない光博は、1人取り残されてしまったような孤独感を感じる

「ソマリ」で忙しい日々を過ごす聖太郎
店主・相馬に認められて新人菓子職人が出場するコンクールに出場する事を勧められる
見事優秀賞を獲得して聖太郎は、その副賞として3週間のフランス研修旅行へ

1995年 年明け早々聖太郎はフランスへ旅立った
そして1月17日未明・・・神戸は大きな震災に襲われる

神戸やその周辺に住んでいる人、関係者はこの震災で人生が大きく変わる
それは、光博・凛々花そしてフランスに滞在中の聖太郎も


光博は震災後、自ら願い出て自社工場の復旧に尽力
凛々花は天才と言ってよいライバルの出現に一度はピアニストの夢を諦めかけたが
憧れのロシアのピアニストの元に押しかけ弟子入りをする
そして聖太郎は、フランスに留まり現地で惚れ込んだショコラトリーで
ショコラティエとして修業する事を決意する

3年後、現地でショコラティエのコンクールに出場・特別賞を受賞した聖太郎は
いよいよ帰国して日本で自分の店を持つ事に
十年ぶりに、聖太郎と光博は再会を果たし 子供の頃にした他愛もない約束を果たすことに!!


1985年からの物語は、自分の青春時代と微妙にリンクしたり
バブル全盛期から破綻
阪神淡路大震災やオウム事件などが背景に散りばめられ、懐かしい気持ちと
自分も子供~青春時代に感じたコンプレックスなどを思い出したり
ページをめくり、物語が進む毎に
まるで自分自身のアルバムを見返しているような気持ちになりました







そして、本書のカバー
高級ショコラトリーのギフトボックスのような感じですよね
そして、中央に白い鳩が翼を大きく広げています

宗教・キリスト教に疎い私でも何故カバーイラストに白鳩が描かれているのか?
本書を読み終わった後
なんとなく”あっ!!そーいう事の象徴なのだ!”と分かった気持ちです
(注・受胎告知ではないです^^;・・?ん?ある意味では告知なのかな?)




奇しくも 和菓子屋さんを舞台にした時代小説(甘いもんでもおひとつシリーズ)
洋菓子店を舞台にした現代小説(本書)と甘いモノシリーズが続いてしまいました

あぁ~美味しいお菓子が食べたい!!!

2019.03.18 
上菓子司「藍千堂」を舞台にした第二弾
晴れの日には
『晴れの日には 藍千堂菓子噺』 田牧大和


第一弾「甘いもんでもおひとつ」の続編です
叔父・百瀬屋清右衛門との蟠りも‟とりあえず”緩和され
菓子作りと商いに精を出す、晴太郎・幸次郎兄弟と茂市っつあん

藍千堂の贔屓客である旗本・松沢家の端午の節句の菓子作りで
晴太郎は佐菜という亡き母に似た面影をもつ女と出会う
6歳の‟さち”とひっそり肩を寄せ合って暮らす佐菜は‟訳アリ”だった
松沢家の面々や、佐菜の「訳」を知る人々から
藍千堂の主である晴太郎には、佐菜親子とは関わるなと釘を刺されるが
どうしても惹かれていく晴太郎

佐奈の「訳」には、悪名高き奉行所の年番与力の存在があった
藍千堂の行く末と晴太郎の恋路は・・・・・



菓子作りの才は溢れる程にあるのに、他の事には無頓着な晴太郎
「嫁取り」は弟・幸次郎の方が先!(お糸ちゃんもいるしね)と思っていたら
まさかの「お兄ちゃん」の恋物語の一冊でした
自分が作る和菓子のように、おっとり優し気な晴太郎の芯には
とてもとても強い鋼のような精神と情熱が潜んでいたんですね



本当にこの「藍千堂」シリーズは、温かい
読んだ後、晴太郎の作る菓子のように優しく暖かな気持ちになる一冊です
ほんとに素敵なシリーズです



殆ど登場しない脇役ですが、登坂家の兄弟・おさちちゃんにとっては異母兄弟にあたるけど
2人にも幸せになって欲しい
表立って‟妹”に会う事は出来ないかもしれないけど、2人が懸命に命を守った義母と妹
いつか再会して、藍千堂のお菓子を笑顔で楽しめる日が来るといいなぁ・・・
と、一読者としては願わずにいられません

2019.03.16 
あぁ~なんて素敵な噺 登場人物全てが愛おしい
甘いもんでも
『甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺』 田牧大和・著


田牧大和氏の作品を続いて

江戸・天才的な菓子職人の兄・晴太郎と商いの才のある弟・幸次郎の兄弟が営む
上菓子司「藍千堂」を舞台に、四季の移ろいとお菓子が綴る物語

元は江戸屈指の上菓子司「百瀬屋」の跡取り息子達だった晴太郎と幸次郎
両親が相次いで亡くなった後、叔父から店を追い出されてしまう

父・清右衛門の元で菓子職人であった茂市と
父の友であった、大店伊勢屋の助けもあり、兄弟で『藍千堂』を営んでいる
父譲りの菓子作りの才のある晴太郎の菓子は評判になり
常連・上客もつきはじめる

「百瀬屋」の二代目(兄弟には叔父にあたる)清右衛門は何かにつけて「藍千堂」を潰そうと
数々の嫌がらせを仕掛けてくるが
幸次郎の機転と、晴太郎の作る和菓子が数々の出来事を収めていく



両親が生きている間は、優しくて頼もしい叔父が何故豹変してしまったのか?
その謎は本書の最後に収められた話で解けるのですが

叔父・清右衛門の心の内の葛藤が手にとるように分かって、切ない・・・・

本書には6つのお話が収められています

幸次郎の甘くて苦い初恋と、その相手の女性と邂逅する「弥生のあの女(ひと)」
旗本同士の縁組、若殿様と気の強い氷柱姫の仲を取り持つ「氷柱姫」
兄弟の従妹(現・百瀬屋の一人娘)お糸の見合い騒動「迷子騒動」

藍千堂そして百瀬屋に起こる出来事
苦しみ・切なさ・恋しさ、色々な事件が起きますが
藍千堂 晴太郎と茂市っつあんが作る繊細で優しい和菓子が
全てを包みこんでくれるような一冊です


繊細な晴太郎 クールで意固地な幸次郎 おきゃんで一途なお糸
意地悪ジジイ?と思った叔父・百瀬屋も、手厳しい伊勢屋・総左衛門も
みんなみんな愛おしくなる物語です

晴太郎が言います
子供だけじゃない。大人も、金持ちだって、貧乏してたって
『甘いもんでもおひとつ』って言葉には、みんないい顔するじゃないか


藍千堂のお菓子なら、勿論「いい顔」するでしょうけど

この物語を読んだ後、時代小説ファンはみんな「いい顔」する物語だと思います


「藍千堂菓子噺」は既にシリーズ化していて、続編が既に刊行されているそうです
早速、読まなくちゃ

2019.03.14