私も“猫の傀儡”になりたい!
猫のくぐつ
『猫の傀儡』 西條奈加・著

人と共に暮らす猫達、猫同士にも色々な問題が起こる
時には人間の手助けがないと解決出来ない問題も
そこで江戸の町々に人間を己が手足のように操る傀儡師
と呼ばれる特別な猫が存在する
江戸の米町=猫町の先代の傀儡師・順松が行方知れずになって一月あまり
新たに猫町の傀儡師になったのは”おっとり長屋”に住まう白黒猫のミスジ
そしてミスジの傀儡に決められたのは、狂言作家の阿次郎
猫町に住む猫やミスジの昔仲間に起きた事件を
ミスジは傀儡の阿次郎を“操り”事件を解決していく


本作の主人公はあくまで猫のミスジであり、物語も猫目線で語られていきます

世の中の猫は全て「傀儡師」だと思うのですよ
猫好き・猫飼いさんは、漏れなく猫の「傀儡」だと思うのです
なにより猫好きにとっては、猫の傀儡になるのは望外の喜びだと思います
『あぁ~~お猫さまに操られたい~~』と変態チックに思っております


犬は人につき、猫は家につく
と一般に猫は犬に比べて情が薄いとか恩知らずとか言われますが
猫はとっても情が深いですよ

猫好きの琴線を思いっきり揺さぶってくれる1冊でした
なんとなく本作で決着がついてしまったようですが
出来ればシリーズ化して欲しい物語です
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2017.08.19 
本当にささやかな事件・事故?でも当事者には重大事件!
菜の花
『菜の花食堂のささやかな事件簿』 藍野圭・著
東京・武蔵野と呼ばれる地域にある街が舞台
もう直ぐ還暦を迎える靖子先生(下河辺靖子)が自宅を改装して営む『菜の花食堂』
地元の野菜を中心にランチ営業のみの
地元民に愛される評判の食堂です

常連さんたちの要望で、月に2回程予約制で料理教室を開催
そこで教室の助手を務めるのは、今は派遣社員として不動産会社に勤務する優希
料理教室に通ってくる“生徒さん”達のちょっとした変化で
他人からみたら本当にささやかな事件、でも当人達にしたら人生を左右しかねない重大事を
靖子先生が鋭い洞察力と温かい心と
そして何より、美味しい料理で傷ついた心と身体を癒していく短編集です


柔らかい文章で語られていく物語は、社会問題になっている物を切り取っていたり
自分の経験に近い事柄が物語りになっています

優希さんが以前勤めていた会社を“辞めざるおえなかった”事情がからんだ
『ケーキに罪はない』・・・本当に卑しい女性と、優希さんを標的にした虐めが語られてます
『ゴボウは主張する』・・・女の友情って難しいですね・・・だから“ママ友”って嫌なんですよ
後味の悪い話もありますが(結末は靖子先生の機転でスッキリ!ですが)
『はちみつはささやく』・・・お互い思い会ってのすれ違いが可愛らしく語れます
『茄子は覚えている』・・・カワイイ?おじさまの歳の差婚の顛末が思い出の味と共ハッピーエンド
『小豆は知っている』・・・“壊れた”と思っていた家族が再生へとむかう切欠の物語
『チョコレートの願い』・・・上品で優しくて洞察力に優れた靖子先生の謎に包まれた過去と家族のエピソード

靖子先生の周りに集う人は、その心に深さの違いがあれど傷を負った人達です
靖子先生もね
傷ついた人だからこそ、他人の変化や痛みにも敏感に気付いてあげられる
他人からどんなに酷い事を言われても、傷付けられても
世界中が自分の敵になってしまっても、誰か一人でも自分を信じてくれる人いたら
頑張って生きていける

そんなことを、そっと教えて救ってくれるのが『靖子先生』です


そして読後、自分なりに“美味しいご飯を作ろう!”と思わせてくれる一冊でした

2017.08.15 
とうとう・・・・終わってしまった
泣き虫弱虫
『泣き虫弱虫諸葛孔明』第伍部 酒見賢一・著
一部『三国志』フリーク 孔明親派に衝撃をもって迎えられ話題になった本書
ついに完結です

三国志のスター不世出の名軍師・諸葛亮孔明の生涯を描いた物語です

『第伍部』では、先帝劉備亡き後、劉禅を支えて『南征』と
孔明最期の戦いになる5回に及ぶ『北伐』が描かれていきます

筋は、もう何も申しますまい・・・周知の事ですからね


ただ、「孔明も歳には勝てない」といいますか、第壱部・弐部のような“ぶっ飛んだ”姿は
すっかり影を潜め、一見常識人になってしまったのが、哀しい・・・・
とはいえ、周りの武将やライバル魏・呉の面々からは、相変わらず『変質者』と見られているのが救いか^^?

孔明の一番の理解者?で、気味の悪い悪巧みを一緒にノリノリでやってくれた劉備を失い
孔明に負けず劣らず強烈な個性を持ったライバル達、曹操・周瑜 達も次々と世を去り
後を継いだ、曹丕・陸遜は先代達と比べると“小粒感”は拭えない
永遠のライバルと言われる、司馬懿ですらなんとな~く郭嘉や荀彧と比べると“お行儀が良すぎる”
(あくまで、酒見氏が描く中での話しですが)


元気だったおじいちゃんが、若い頃一緒にヤンチャした幼馴染が次々鬼籍に入ってしまって
少しづつ生気がなくなって、大人しくなっちゃうような
なんとも言えない寂しさを感じました

気分は、土井晩翠の「星落秋風五丈原」ですわ・・・




もう一度、元気な頃?の変質者と殺戮4兄弟(劉備・関雲・張飛・超雲)に会いたいなぁ
第壱部からリピートしようと思います

2017.08.02 
好きなタイプのお話でした
最後の晩ごはん
『最後の晩ごはん』 椹野 道流・著
若手イケメン俳優として売れ出していた、五十嵐カイリ(本名・五十嵐海里)は
嘘のスキャンダル記事により芸能界から追放されてしまう
母と兄が暮らす神戸に数年ぶりに帰るが
芸能界入りを反対し折り合いの兄は、実家に留まる事を許さず
海里もそのまま家を飛び出してしまう

行き先を無くした海里、不良に絡まれていた所を
夜だけ営業する定食屋「ばんめし屋」を営む“夏神留二”に助けられ
彼の店件住居に居候する事に
住宅街の寂しい場所にある「ばんめし屋」
「日替わり定食」一品だけだが、料理の美味しさでそこそこ繁盛している様子

留二の料理に魅せられた客は、人間だけではないようで!!!!




登場人物の年齢が、海里=25歳  夏神=40手前くらい?
ライトノベルというには、ちょっと年齢高いかな?
「ばんめし屋」と夏神の設定から、『深夜食堂』的は話かな?と思い読み進めていきましたが
眼鏡の“付喪神”=ロイドが登場してから、+『しゃばけ』的要素も入ってきたような?
『真夜中のパン屋さん』にも近いかも?

日常生活+ちょっと不思議系(ファンタジー系)は好きな話です

眼鏡愛用者としてはロイド“氏”の存在は羨ましい~
人間型?になった姿が50代の英国紳士というのも、ド・ストライクゾーン!で御座います
いいなぁ~眼鏡の付喪神
私だったら、猫の姿で居てもらいたいなぁ~


シリーズで何冊か刊行されいるようですので、続きも読みたいと思います

2017.07.28 
熱帯夜が続きますね そーいうのが恋しくなる季節です
溝猫長屋
『溝猫長屋 祠之怪』 輪渡颯介・著
麻布、宮下町にある通称『溝猫長屋』にはある“決まり事”がある
長屋に住む店子の中で一番年長の子供が
毎朝大家の吉兵衛と長屋の奥にある「お多恵ちゃんの祠」にお参りに行かなければならない

その年は同じ年生まれ12歳の、忠次・新七・留吉・銀太の4人が行う事に
実は「祠参り」が始まると、当番になった子供達は寺子屋に真面目に通い
一年と経たずに奉公や職人修行の為に長屋を出て行く

「祠参り」の代償というべき能力は『幽霊をみつける』能力
あまり嬉しくない・・・・・
通常にはない、幽霊の匂いを感知する『嗅ぐ』
幽霊の声や足音を感知する『聞く』
そして姿を見つける『見る』
3つの能力が、4人に順番に訪れる

忠次達以前の子供達は、そんな“怖ろしい”出来事から早く逃れたくて
真面目に寺子屋に通って、早々の奉公先を決めるのに
4人は、恐さより好奇心の方が強く好んで“お化けが出る空き家”に忍び込んだりする

本書には4つの物語が収録されていますが
1つ1つの物語は、最初に忍び込んだ空き家で幽霊となって現れた子供
栄三郎殺しの下手人へと繋がっていきます



タイトルと表紙の可愛らしいイラストに惹かれて“ジャケ読み”でしたが
面白い、楽しい物語でした
季節もちょうど今時分ですしね
映画『スタンド・バイ・ミー』の江戸時代版という感じです
子供達が本当に“子供らしく”て可愛い
それぞれのキャラクターもしっかり設定されているので読み易い
行儀良くて頭の良い・新七
兄弟が多く弟妹の面倒をみる優しい・留吉
やんちゃでガキ大将・銀太
平凡だけど実は一番しっかりしてる・忠次
小言が多いけど長屋の大家の吉兵衛
元溝猫長屋の店子で今は目明しの弥之助親分
子供達が通う寺子屋の師匠、連十郎

時に危な気で無茶をする子供達の行動を
“いい距離感”で見守っている大人達もなかなか“いい味”だしてます!


猫好きとしては、長屋に住む16匹の猫の名前に(笑)です









2017.07.24